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夢の共演「アーティストと同じステージに立つ!?」a-nationのVRを体験してきた

2016.10.26
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2016年は、「VR元年」といわれているようで、10月にはプレイステーション®が家庭用VR機「PlayStation®VR」を発売して話題になったりと、かなりVR(ヴァーチャル・リアリティ)が注目されていますね。
そこで今回は、8/27~28に東京・味の素スタジアムで開催された「a-nation stadium fes. 2016 powered by dTV」が VRで体感できるということで、いろいろとお話をうかがってきました。


「えっ コレでホントにみられるの!?


はい、コレがa-nationに来場した人たちに配られたというVRスコープをはじめてみたときの私の印象です。
 
だってVRスコープといえば近未来的な軍用スコープみたいなものをイメージするじゃないですか。それが、あろうことか組み立てが超簡単な紙製ですよ。
しかもスタイリッシュでオシャレなアニマルじゃありませんか。ホントコレでVRが見えるのかなぁ~と少々不安を覚えたのですが…。

実際に体感してみると「うわっ スッゲーー!!と思わず言葉が漏れてしまいました。
 

まず私の目の前に現れたのは、会場を埋め尽くさんばかりのお客さんの姿。そうなんです。
 
私はまさにa-nationのステージの上に立っていたのです。
 
曲が流れ、アーティストが登場。って、隣におる!! 思わず手が伸びそうになりました。
間近でみるアーティストのパフォーマンス。そしてボルテージを加速させる会場のテンション。5万人の観客が見ているのはワ・タ・シ…。
 
VRを体感し終わると、いままで味わったことのないような恍惚感に包まれたのです。そんな私をみて、同行したカメラマンが言いました。

「はたから見ていると、挙動不審ですね」って……。

VRライヴ配信」を生んだチャレンジ精神

私が挙動不審かどうかはさておき…。
ミュージックビデオやフルCG映像のVRを体験したことはあったのですが、アーティストの目線でライヴが体感できるa-nationのVR配信はとっても斬新で、大勢の観客との一体感はもちろん。ちょっと目線を変えるとギターやドラムの演奏者たちの表情やパフォーマンス中に忙しそうに働いているスタッフさんの姿まで確認することができました。
 
個人的には普段みることがほとんどできないアーティストの後ろ姿がみられるのが興味深く、
まるで自分が育てあげたアーティストが大観衆を熱狂させている――気分は名プロデューサーです(笑)

新しい体感させていただいたので、さっそくa-nationをVR配信したdTVに携わる、デジタルビジネス本部 音楽コンテンツ統括部長の矢﨑直博(やざき なおひろ)さんにお話をうかがっちゃいました。




-どうしてa-nationをVRで配信しようとしたのでしょうか?
 
矢﨑)これまでa-nationをdTVでLIVE生配信してきたのですが、他の映像配信サービスもLIVE生配信をしているので、同じではいけないと。差別化をしなければならないだろうなという思いがdTVチーム全体にありました。
あとはお客様に対して、去年とは違う新しいことを見せていかなければならないという雰囲気がチーム全体にあって、そうしたことがVRに挑戦するきっかけとなりました。
 
 
-新しいことをしたいというチャレンジ精神がライヴではめずらしいVR配信という取り組みに繋がったんですね。

矢﨑)ライヴのVRという参考事例がまったくないなかで思い切ってチャレンジをした――というとかっこよく聞こえるんですが、実際には、みんなでビビリながら「エイ、ヤッ!!」って感じでしたね(一同爆笑)
なので、(VRで)やるということだけが先に決まっていて、あとからどうしよう~っていう部分がかなりありました。
 

-「エイ、ヤッ!!」ということですが(笑)、ライヴのVR挑戦には不安な部分もかなりあったということでしょうか?
 
矢﨑)実際、ライヴをVR撮影する前の段階でもカメラが新しくなっちゃたりするんですよ。技術がドンドン進化していて。それにあわせてカメラを用意しなおしたりする必要もありました。
 
また、VR自体がだいぶメジャーになって、みなさんも頭の中ではわかっていても、言葉の意味としてVRはまだまだ2つの意味を持って使われていて、一つは、いわゆる「360度パノラマ」のことをVRと呼んでいますね。
 
ですが、dTVではこれをVRとは呼ばず、「目の視差を利用してみえる立体視をふくめた映像」をVRと呼んでいます。
そいう意味では立体視をふくめたVRの文化を根付かせたかったという思いがありました。
 

-それがVRスコープの無料配布に繋がったということですね
 
矢﨑)VRスコープの無料配布に関しては、Google社がニューヨーク・タイムズ日曜版の購読者(とデジタル版の購読者の一部)に、カードボード(※同社のVRスコープ)をかなりの数を配ってニュース映像を配信したという事例も参考になりました。
dTVチームみんなで、折角やるならば・・・「じゃあ、a-nationでも無料で配ってみよう!」ということになって最終的には11万個のVRスコープをつくって、来場者全員に配ることにしました。


今年やらなければ誰かがやってしまう

-11万個のVRスコープを無料配布ですか――因みに、下世話な質問ですが相当なお値段がかかったのではないでしょうか?
 
矢﨑)詳しい金額はアレですけど、お陰様で広告予算がギリギリになってしまいました(笑)
ただ、たぶんこれは今年中にやらないと他に誰かがやってしまうだろうな、という意識はものすごく強くありましたし、そこはavexとして他にさきがけてやらなければならないと考えていました。
ただ、本当にライヴのVR配信がどうなるのかはやってみるまで答えがわかりませんでした。
 
それとせっかくつくったVRスコープを本当に手にとってもらえるのかどうか正直なところ不安な意見もありました。
パッとみたときにコレをVRスコープだと認識して、実際どのくらいの人が利用してくれるのか……みんな捨てちゃうかもしれない、「これでVR映像がみえるのか?」と理解してもらえないかもしれないという危惧はありました。
なので、宣伝担当がめちゃくちゃ考えて、誰でも簡単に組み立てられるように工夫しました。
 

-正直、私もVR映像がコレでみえるの!?って思いました(笑)
 
矢﨑)そうなんですよね。だから色やデザインにもこだわって、VRスコープをつけているときに、「ヒョウ柄いいね」「サルかわいいネ」なんて会話が生まれるように女性社員の意見をとりいれ、その感性を意識した5種類のデザインを用意して配布しました。
ライヴ会場でなにかファッションのひとつにもなるような、そんなイメージを持って作りました。
 
 
-それがこの先鋭的なデザインになったんですね。a-nationをVR化したその後の反響はいかがでしょうか?
 
矢﨑)a-nationが終わってからdocomoさんのほうにもVRの企画をやってみたいという反響がよせられているということなので、a-nationのVR配信を試みる前と後では環境が良い方に変わってきましたね。
 
 

-ということは「やっぱりチャレンジをしてみて良かった」、成功だったということでしょうか?

矢﨑)そうなんですけども、ものすごく失敗が多かった。というか今後への課題がたくさん見つかりましたね。
チャレンジしたことによってライヴをVRで配信することの課題や問題点を浮き彫りにすることができましたね。
 
 
-課題というのは?

矢﨑)まず、ライヴのVR撮影の難しさですね。今回のチャレンジでこのことを痛感させられました。問題点としては、ひとつにカメラ技術の問題。それとアーティストの気持ちの問題があるかなと思っています。
カメラ技術の問題は、今回はステージにカメラを置くか、花道に置くかアーティストに選んでもらい、VRを撮るために5台のカメラを星型に設置して撮影しました。ただ、どうしてもカメラの死角ができてしまう。
その死角に立たれるとアーティストが消えちゃうんです。あとは近づき過ぎちゃってもだめなんですね。
 
a-nationの場合はダンスパフォーマンスをするアーティストが多くいます。そうしたなかでどうしてもダンサーが消えてしまう場合も想定されました。
なので、アーティスト側がそれを理解した上で舞台演出をしないと良いパフォーマンスにならないこともあって、アーティスト側との綿密な意識の摺合せが必要になりました。
 
あるアーティストの場合は、ご本人はもちろん、監督やダンサーさんとも打ち合わせして、なんどもリハーサルをして肌感覚でVR撮影を感じていただきました。
 
一方で、アーティストの気持ちなんですが、アーティストは会場に来てくれている5万人の来場者、ファンのためにパフォーマンスをしていますよね。だからVR撮影のためにカメラを意識してするのは少し違うワケです。

アーティストとしてもファンをほったらかしにしてしまっているような気持ちが少なからずあると考えて、この部分ではアーティストの皆さんにも葛藤があったと思います。
 
 
-ゲームや映画にはない「ライヴ」だからこそ、でてくる独特な課題のようにかんじますね。
 
矢﨑)そうですね。ただ、新しい発見もありまして撮影カメラによってはアーティストの後ろ姿がかなり見られる作品もあるんです(笑)
「なんじゃこりゃ?」って思う人もいると思いますが、僕は面白いなって思ったんです。なぜかというと普段アーティストの後姿ってそんなに見れるものじゃない。

この後姿をステージから見ることで、アーティストのパフォーマーの一人としてステージに立っている感覚になれると思うんです。
 
 
-それは私もVRを観て感じました。見守っているというか、一緒にライヴしてる感がとっても強いですね。
 
矢﨑)アーティストって、ステージに立っているときはこんな感じで観客をみているんだな~とか、上を見ると空が曇っていて、下をみるとスタッフが ―ライヴってこうやって運営されているんだな― といった、観客だと普段まったく気がつかない部分が体感できるんですよね。そういった、いくらお金を出しても買えない体験ができる。
 
ライヴの迫力とかアーティストの近さもさることながら、そうした楽しみかたもあるという発見ができたことは、VRに挑戦してみて初めてみえたことで、新しい発想で楽しみ方というのはいくらでも広がるんだなということを感じました。


-a-nationのVRが続々と配信されてますが見どころはどんなところでしょうか?
 
矢﨑)ステージに立ってアーティストと一緒に観客席を見渡してもいいし、間近で大好きなアーティストをみるのもいいですし、やっぱり一人ひとりが独自の楽しみ方をできるというのがいいんじゃないでしょうか。
あとは11/4以降の配信になりますが、浜崎あゆみとBIGBANGのVRは、アーティストが会場を一周する際に乗るフロート同乗体験ができます。
私、昔からフロートに乗りたくて「フロート乗ったら気持ちがいいんだろうなぁ~」と思っていたので、最初は懸念もありましたがフロートにカメラを設置しました。  

ここからの映像も楽しんでいただければと思います(笑)
 


-最後になりますが今後のdTVのVRへの取り組みなどを教えてください。
 
矢﨑)ライヴをVRにするというので、今回は観客席側の画質を荒くして対応したので問題ありませんが、今後カメラがさらに進歩して画質が良くなると、来場した御客様のプライバシーとかの問題もでてくるでしょうね。
また、配信動画の長さや対象年齢といったVR映像が健康に与える影響も考慮していかなければならないと思います。
 
課題はたくさんありますね。ただ、今後のdTVやavexの可能性を考えると、ライヴをVR化するというチャレンジは経験として非常に財産になったと思っています。
 
苦労もたくさんありましたが、やってよかったですね(笑)

a-nationをVR配信した今回の試み。
さまざまな未来への形がみえることとなり、新しい発見があったのではないかと取材をさせていただき感じました。
これからのdTVに期待していきたいと思います。

10/26現在配信されているのがこちら
倖田來未
三浦大知
ET-KING
AAA
Da-iCE
lol -エルオーエル-
和楽器バンド

そして今後の配信スケジュール

10/28 10:00~
Acid Black Cherry/SKE48/防弾少年団

11/4 10:00~
BIGBANG/iKON/ソナーポケット

11/11 10:00~
DAIGO/超特急/TRF/浜崎あゆみ


アプリ、VR映像ともダウンロードにかなりの容量になります。WiFi環境でのご使用をオススメします。


【dTV公式サイト】
http://video.dmkt-sp.jp/

【dTV VR特集サイト】

http://video.dmkt-sp.jp/ft/s0005037




 
朝日 文左(アサヒ ブンザ)
WRITTEN BY朝日 文左(アサヒ ブンザ)
青森県三沢市出身。日本体育大学を卒業後、岬龍一郎氏の内弟子となり武士道を学ぶ。紙面では『日本人のDNAを創った20人』(著・岬龍一郎 育鵬社)『まんがでわかる新渡戸稲造「武士道」』(監修・岬龍一郎 漫画・涼原ミハル シナリオ・朝日文左 あさ出版)『新渡戸稲造という生き方』(別冊宝島)を執筆。現在は書籍、インターネット、ゲームなどを中心に執筆中。
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