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Thank You Disney

『Thank You Disney』発売記念!全曲レビュー&“Miracle Vell Magic”インタビュー

2017.10.25
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ヴォーカル
私達に『夢』と『感動』と『勇気』を与え続けるディズニー作品の数々。眠れぬ夜に、心細い夜に救われた人も多いのではないだろうか。この度、そんなディズニーの名曲を日本のミュージシャンがカバーした珠玉のアルバムが発売されることになった。
その名も『Thank You Disney』。
『ディセンダント』の監督を務める“ケニー・オルテガ”をエグゼクティブ・プロデューサーに迎えた今作は、オリジナルの魅力を活かしつつ、“ケニー・オルテガ”らしさが散りばめられたポップで聴きやすいアレンジになっている。


今回は『Thank You Disney』全曲レビューと参加アーティストの“Miracle Vell Magic(ミラクル・ベル・マジック)”のインタビューをお届けする。


『Thank You Disney』全曲レビュー

<レット・イット・ゴー/ビッケブランカ>【アナと雪の女王】
記憶に新しい『アナと雪の女王』の「レット・イット・ゴー」。誰しもが知る名曲を、実力派である“ビッケブランカ”がカバーする。原曲はストリングスとピアノが利いたオーケストレーションの強いものであるが、こちらポップ色の強いバンドアレンジ。この曲の肝ともいえるファルセットは、彼だからこそ歌い上げられたと言っても過言ではないだろう。

<愛を感じて/Beverly(ビバリー)>【ライオン・キング】
本来は厳かな「愛を感じて」も、“Beverly”の手にかかるとメロウなR&Bに早変わりする。『ライオン・キング』の壮大な世界観はそのままに、ポップにアレンジされた楽曲は原曲とはまた一味違う趣を醸し出している。後半部分の<Can you feel>から始まるメロディラインは、彼女の声とコーラスが重なり大聖堂で聴いているゴスペルのよう。新時代の歌姫の実力を、ぜひこの曲で実感してほしい。

<星に願いを/三浦大知>【ピノキオ】
温かく深みのある歌声が原曲さながらで、思わず歌い手が“三浦大知”であることを確認してしまった。本来よりも少しアップテンポで奏でられる曲は、ギターの音色がキラキラしていて眠れぬ夜に聴くオルゴールのようだ。『ピノキオ』が人間になりたいと願ったように、この曲を聴きながら「星に願いを」かけてみてはいかがだろうか。

<美女と野獣/西島隆弘&宇野実彩子>【美女と野獣】
YouTubeに公開するやいなや話題をさらっていた「美女と野獣」だが、今回はケニー・オルデガによる新たなアレンジにより歌い直された新バージョンであることも今回のアルバムの目玉の1つ。安定感のあるハモリやグルーブは、普段から“AAA”として活動している彼らだからこそ生み出されるのであろう。原曲よりもアップテンポにすることで耳なじみがよい曲になりつつも、後半の高音で歌うところなど聴かせどころも息がぴったり合っている。

<輝く未来/Dream Ami>【塔の上のラプンツェル】
原曲はしっとりしたオーケストレーションで優しく聴かせるデュエットになっているが、“Dream Ami”が歌う「輝く未来」は近年の流行りも継承したアップテンポなトロピカルサウンド。リズミカルな打ち込みがアクセントとして、この曲をより魅力的にしている。可愛らしく明るい彼女の声と、ポップで可愛らしい音作りは相性抜群だ。

<イフ・オンリー/May J.>【ディセンダント】
話題の映画『ディセンダント』の劇中にて、主人公のマルがベン王子とデートした際に自分の生き方に悩み歌われる「イフ・オンリー」。マルが歌う原曲はティーンエイジャー特有の魂の叫びのような味わいがあるが、“May J.” Ver.はちょっと大人な味わいになっている。大サビでの高音の突き抜けが気持ちいいので、必聴ポイントだ。

<ホール・ニュー・ワールド/lol-エルオーエル->【アラジン】
誰もが知っている名曲「ホール・ニュー・ワールド」は『アラジン』のメインテーマ。ゆったりとカーペットの旅を楽しむ原曲と違って、スポーツカーで海辺をドライブしそうなアップチューンに仕上がっている。歌のリズムのハメ方が原曲と異なっているのも特徴なので、聴き比べていただくと面白いのではないだろうか。

<想いを伝えて/SOLIDEMO>【魔法にかけられて】
『魔法にかけられて』の劇中ではジゼルが伸び伸びと歌う姿が印象的な1曲だが、今回は“SOLIDEMO”によりハーモニー感が活きるノリのいい曲へと変貌をとげている。原曲ではサックスや鉄琴など生楽器を基調とした音楽になっているのだが、シンセサイザーを中心としたエレクトロニックサウンドに変化しているのも面白い点の1つだ。

<ユール・ビー・イン・マイ・ハート/シシド・カフカ>【ターザン®】
本来は男性が歌うこちらの曲を今回は“シシド・カフカ”が手掛ける。歌とドラムのリズムが緻密に絡み合うアレンジは、ドラムヴォーカルである彼女だからなせる業。『ターザン®』の世界を反映したアマゾンチックな原曲とは対極的な、近未来な音作りも聴きどころの1つといえるだろう。

<ホエン・シー・ラブド・ミー/MONKEY MAJIK>【トイ・ストーリー2】
隠れた名曲と名高い「ホエン・シー・ラブド・ミー」は、『トイ・ストーリー2』のヒロインである“ジェシー”のメインテーマだ。原曲の“サラ・マクラクラン”の儚げな歌声も魅力的だったが、とても暖かく聴こえてくるのは“MONKEY MAJIK”のヴォーカル2人が、兄弟としておもちゃをわかちあった記憶が息づいているからなのではないだろうか。原曲の良さを残したカントリーアレンジも注目すべきポイントである。

<パート・オブ・ユア・ワールド/アイナ・ジ・エンド(BiSH)>【リトル・マーメイド】
普段はパンクでシャウトしている“アイナ・ジ・エンド”が「パート・オブ・ユア・ワールド」を歌うなんて誰が想像しただろうか。「BiSHだしパンクでしょ?」 と侮ることなかれ、耳を満たすのは予想を裏切る丁寧なバラードなのだから。静かに穏やかに進む曲の中に苦悶や望みをこれでもかと詰め込むことができたのは、エリックへの恋心で苦悩するアリエルと共鳴したからなのかもしれない。

<悪の力を呼び覚ませ/Miracle Vell Magic>【ディセンダント2】
根っからのディズニーラバー、“Miracle Vell Magic”が歌っているだけあって原曲「悪の力を呼び覚ませ」へのリスペクトが色濃く映し出されている。『ディセンダント2』が持つ毒々しい悪の世界を表現できるのは、彼女が自分を伝えるということにおいてたくさんの引き出しを持っているからに他ならないだろう。

<トライ・エブリシング/U-KISS>【ズートピア】
『ズートピア』の希望に溢れたわくわくする空気はそのままに、よりキラキラしたポップスにアレンジ。爽やかな声の重なりを生み出せるのは、実力派ユニット“U-KISS”ならではだ。原曲はラテンポップシンガーである“シャキーラ”の歌声がシンプルにかっこいいが、“U-KISS”Verでは男性ヴォーカルならではのハーモニー、シンセサイザーやクラップ音など原曲には入っていない音もたくさん増えているのでサウンドの厚みの変化にも注目だ。

<夢はひそかに/柏木由紀(AKB48/NGT48兼任)>【シンデレラ】
『シンデレラ』に打って変わって、その夢を紡ぐのはアイドルとして活躍している“柏木由紀”だ。「夢はひそかに」が持っている可憐なイメージはそのままに、可愛らしくよりポップに歌い上げる。原曲がワルツで進行するのに対して、今回は4拍子で進行するのも味わいどころのひとつと言えるだろう。

<みんなスター/SKE48>【ハイスクール・ミュージカル】
原曲はブラスバンドサウンドなのに対して、こちらはシンセサイザーを中心とした可愛らしくポップな仕上がりに。女声だけだからこそ作りあげられる繊細かつ可愛らしい音楽が、聴く人の心をハッピーにする。テンポなどはほぼ原曲と変わらないアレンジになっているので、『High School Musical』が好きな人にも気に入っていただけることだろう。“SKE48”が創りあげるガールズポップの世界観をたっぷりと味わっていただきたい。

<そばにいて/倖田來未>【魔法にかけられて】
『魔法にかけられて』の劇中ではジゼルとフィリップがダンスをするシーンで使われているこの曲。ワルツのリズムから4拍子にアレンジすることで、より一層感情が入りやすいバラードへと変化を遂げている。本来であればオーケストラのダイナミクスによって感情を後押しする間奏部分が、“倖田來未”の歌唱力で表現されているのは聴きどころである。


“Miracle Vell Magic”インタビュー



―『Thank You Disney』のオファーが来た時は、どう思いましたか。

Miracle Vell Magic(ミラクルベルマジック※以下、ベル))
夢のようなお話だったので信じられなくて、なんだか最初は喜びよりも、驚きの方が強かったです。嬉しすぎて「どういうこと?」って半月くらい思っていましたね(笑)。
でも、大好きなディズニーのアルバムに参加できて、大好きな“ケニー・オルテガ”さんプロデュースで、大好きな『ディセンダント』の曲で。大好きが重なっていたので、3段階で嬉しかったです。


―ベルさんが歌う「悪の力を呼び覚ませ」の聴きどころは、どこでしょうか。

ベル)ハモリの部分は特に注目してもらいたいです! ヴィランズらしい不況和音チックなマイナー調のハモリがちりばめられています!一般的なハモリではなくて苦戦しましたが、とてもいいものが作れたので、ヴォーカルの裏まで聴いていただけたら嬉しいですね。



―『ディセンダント2』サウンドトラックと『Thank You Disney』で同じ曲を担当されていますが、かなりアレンジが違いますよね。何か歌い分けで意識されたことはありますか。

ベル)原曲はオーケストラがかっこいい豪華な音なんですけど、『Thank You Disney』の方は音がすごいシンプルなんですよ。なので、今回は“自分一人の声でいかに豪華に聴かせられるか”っていう挑戦でしたね。
自分でコーラスやハモリも担当したんですけど、その関係で今回は50トラックくらい録ったんです。上のハモリは可愛らしい感じ、下のハモリは怖い感じなどイメージを変えることにより、人数感がでるように工夫しました。


―ベルさんは何かを演じたりされる時に、その世界に強く入りこむ印象があります。今回の「悪の力を呼び覚ませ」を歌うにあたって、日常でヴィランズ感が出てしまったりしたことはありますか。

ベル)ありましたね。もともと私の中にはいろんな人になりきるためのスイッチがあるんです。お笑い、プリンセス、ヴィランズ、みたいに。「悪の力を呼び覚ませ」を歌ったあとは、ヴィランズスイッチが入ったままになっちゃって(笑)。
目つきや話し方、歩き方が“マル”(『ディセンダント2』の主人公)みたいになってました。この曲を歌ったことにより、私が持っていた“マル”に似ている一面が引き出されたのかなって思ってます。


―『ディセンダント』シリーズのキャラクターで好きなのは誰ですか。

ベル)マレフィセントの娘、“マル”が大好き! 私にとって彼女は憧れであり、身近な存在なんです。
もともと学生時代は、“マル”みたいな感じで生きてきたんですよ。「いい子にしろ!」って言われると「嫌だ!」っていう天邪鬼な感じ。“自由に生きたい”、“わが道をいきたい”と思っていたので(笑)。そういうところは似てるかな。
また『ディセンダント2』を見たときが、“自分らしくあること”について悩んでいた時期だったんです。同じ悩みを抱えている“マル”をタイムリーに見て、すごく心に刺さりましたね。“マル”って強そうで完璧で何も怖いものが無さそうだけど、実は繊細で脆い心の持ち主で。そういう部分も含めて自分に近い部分を感じたっていうのもありますね。
実は“マル”だけでなく、演じている“ダヴ・キャメロン”も大好き。本当に可愛いですよね。彼女は私にとってのガールクラッシュ(女性が惚れる女性)。すごく魅力的なんです。


―ベルさんといえばディズニーが大好きというイメージが強いのですが『ディセンダント』以外で好きな作品はありますか。

ベル)作品だったら『美女と野獣』です。大好きなんですよ。私の“ベル”っていう名前も、そこからインスパイアされているくらい。


―『美女と野獣』に出ている“ベル”にも、“マル”のように似ている点がありますか。

ベル)“ベル”は憧れが強すぎて、共通点をあげるのは難しいですね。しいてあげるなら、本が好きで学ぶことが好きなところかな。中学・高校のころは勉強が大嫌いだったんですけど、大学に入ったら大好きになって。人が変わったように勉強しましたね。
あとは、自分のやりたいことや思っていることに正直なところも似ているかも…。彼女って、すごくマイペースでわが道をいくタイプじゃないですか。野獣に捕らわれてしまったときでさえ、感情にしたがって生きてる。そういう感じは、自分でもすごく共感しますね。


―作品では『美女と野獣』がお好きとのことでしたが、楽曲では何がお好きですか。

ベル)『美女と野獣』の「朝の風景」かな。映画の冒頭で、町の人たちと一緒に歌う曲。自分で声を変えて全キャラを演じながら歌うのが、小さいころからの趣味なんです(笑)。もちろん“ガストン”も自分でやるんですよ。



―『Thank You Disney』を聴いてみていかがでしたか。

ベル)普段、日本語で歌を歌われている方ばかりなのに、ほとんど英語で歌われていて「すごいな」と思いました。それでいてクオリティも、すごく高い! 海外にはない、日本の良さが出ているアルバムになっていると思います。ビルボードのチャートに入っていてもおかしくないような音の作り方だし、世界にも自信を持って出せるんじゃないかな。
アイドルって日本のカルチャーじゃないですか。アイドルのみなさんが、このアルバムに参加したりしていることも“和”とは別の“ジャパン・カルチャー”を感じられて「いいな」と思いました。


―どのアレンジも名曲揃いのアルバムだと思うのですが、ご自身の曲以外でお気に入りをあげるとしたらどの曲になりますか。 

ベル)May J.さんの「イフ・オンリー」ですね。メイ(May J.)ちゃんとは姉妹のように仲がいいので、お互いが『ディセンダント』に関わる曲を担当するって知った時から楽しみにしていて。
聴いてみて「イフ・オンリー」ってこんなにかっこよくなるんだ! って、驚きましたね。今までだとヴォーカルに注目して聴いていた曲だったんですけど、メイちゃんのカバーは彼女のヴォーカル、コーラスやオケの入り方とか、全部のグルーヴ感が本当に気持ちよくて。
今までにない「イフ・オンリー」なので、とても気に入ってます。メイちゃんが歌うことで“マル”とは違って大人な雰囲気があるので、見える情景も変わるなぁと感じていて。新しい「イフ・オンリー」の楽しみ方に出会ったような気がします。


―では最後に『Thank You Disney』はどんなアルバムですか?

ベル)“ケニー・オルテガ”さんのプロデュースは本当に魔法で、ディズニー音楽の新たな魅力を引き出してくれています。聴くたびに新しい発見がある1枚だと思うので、ぜひ原曲と聴き比べてみたりして楽しんでください。



Thank You Disney
2017/10/25 
AVCD-93755  ¥2,700(税込)

【Thank You Disney OFFICIAL SITE】
http://avex.jp/thankyoudisney/

 
坂井彩花
WRITTEN BY坂井彩花
元楽器屋の経験を持つライター。音楽系の記事を中心に執筆中。
人生は盛大なネタです。音楽とお酒と人がすき。
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公式サイト: http://note.mu/color_music
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